まいったな……。
「どうして、か――。本当に何もわからないんだな」
 そんな彼女の質問と怯える顔を直視できなくて、ドアの方を向いて座り直す。
 ベッドに背を預け、立て膝をついて頭を抱える。
 これ以上どうやって説明したらいい? 蒼樹ならどうやって説明するだろうか。
 純粋培養もここまでくると毒というか――。
 どうして自分の欲求に対してここまで無欲になれるんだろう。どうして自分の好きな人にほかの人間を勧められるんだろう。どうしてそんな考え方をするんだろう。……理解ができない。
 俺は、ほかの誰でもなく君を求めてるというのに。それとも、俺が気持ちを伝えることをおこたっているのか?
 正直、今まで相手にしてきた女どもとは全くタイプが違う以前に、人種が違いすぎて勝手がわからない。
 すると、後ろから苦しそうな息が聞こえてきた。
 びっくりして振り返ると、こちらに背を向け丸くなっている彼女がいた。
「……翠葉ちゃんっ!?」
 まずい、過呼吸だっ――。
「栞ちゃんっっっ」
「何、どうし――秋斗くん、氷水持ってきて」
 翠葉ちゃんを見るとすぐに指示が飛んできた。