今日、半日以上お世話になった香乃子ちゃんと空太くん、それから朝陽先輩にもお礼を言い、周りにも声をかけられる範囲で挨拶をしてから上がらせてもらった。
 賑やかな場所からひとり先に離脱するのは苦手。
 でも、後ろ髪引かれてがんばるところを間違っちゃだめ。
 紅葉祭はあと一日あるのだ。

 唯兄に誘導されるまま第四通路を進むと、自分たちの足音ではないものが後ろから聞こえてきた。
 唯兄と顔を見合わせ足を止める。
「翠葉ちゃんっ! 間に合って良かった!」
 息を切らして走ってきたのは茜先輩だった。