「……秋斗さんならもっとすてきな人が似合うだろうなって。私は何かをしてもらうばかりで何も返せないから……」
 待ってくれ――弱い自分を見られたくないっていうこと以外にそんなことまで考えていたのかっ!?
「翠葉ちゃん、そんなことを言うともっと怒るよ?」
 彼女の体が一気に硬直したのがわかった。
 細い肩が思い切り上がっている。
「俺が好きなのは翠葉ちゃんでほかの誰でもないんだけど? その俺に、ほかの誰かが似合うっていうのかな?」
 怯えている彼女を察してはいたけれど、どうしても言わずにはいられなかった。
「……だって、そのほうが幸せなんじゃ――」
「翠葉ちゃん、その先は言わないでくれる?」
 彼女の言葉を遮ると、すぐに、「ごめんなさい」と謝られた。
「中身のない謝罪はほしくないかな」
 表情が豊かな彼女はどんどん顔を歪ませていく。今にも泣きそうだ。
 さっきのリビングで見た涙とは全く違う種の涙。
 もしかしたら本当にわからないのかもしれない。
「……ごめん――でも、好きな子に自分じゃなくてほかの誰かがつりあうって言われて嬉しいわけないでしょ?」
「ど、して……?」
 震える小さな声で訊かれた。