「俺を振った本当の理由は? あれは本当に翠葉ちゃんが自分で考えた答えだった? 誰かの言葉に影響されたからじゃなくて?」
 ゆっくりと話す。彼女の思考が言葉に追いつくように。
「俺は言ったよね? 誰に相談してもかまわないけど、最後には翠葉ちゃんが決めてほしいって。あれは本当に翠葉ちゃんが出した答えだった?」
 お願いだから――雅に言われたことを口にしないでくれ……。
 まだ、今の自分を見られたくないから一緒にいたくないと言われるほうが何倍もマシだ。
「少し思い出してみてくれない? 警護に俺がついていたとき、少しは付き合ってもいいって思ってくれたことがない?」
 あの間、君は確かに俺の腕の中にいただろう?
 彼女の目の焦点が合わなくなる。
 きっと回想中……。そうだ、思い出してくれ――。
 しだいに目が揺れ始める。
「何が原因だった?」
「健康じゃないから……。それに子どもなんて産めるかわからないし――」
「それ、誰かに何かを言われたからじゃないの?」
「――雅さん……」
 ……やっとたどり着いたね。
「それが怒っている本当の理由だよ」
「でもっ、ちゃんと自分でも考えましたっ」
「何を?」
 訊くと、彼女はシーツに視線を落とした。