「秋斗さん、怒っていますか?」
 不安そうな顔で尋ねられた。
 俺はベッドサイドに腰を下ろすと、ベッドのマットに左肘を突いて顎を支える。
「怒ってるわけじゃないけど、少しは怒ってるかな」
 本当は怒っているわけじゃないんだけどね……。
 彼女は必死に心当たりを探しているらしい。
「翠葉ちゃんの中にはどのくらい心当たりがあるの?」
 訊くと、考えていたことをひとつひとつ話し始めた。
「ひとつは当たりかな。でも、それが回答ではないけどね」
「……ひとつはなんですか?」
「雅に会ったこと。……話してほしかった」
 彼女の目を真っ直ぐに見て言う。
 彼女はというと、視線を外すこともできず、とても居心地悪そうにこちらを向いて横になっている。
「……もうひとつはなんでしょう」
「本当にわからない?」
 彼女は少し考え、
「一緒にいられないって答えたことですか?」
「近いけど違うかな」
 すごく困った顔で、
「秋斗さん、理由がわからないと謝れないです」
 と言われたから、ヒントをあげることにした。