「お話中失礼。栞ちゃん、その話の続きは俺がしてもいいかな?」
 栞ちゃんに選手交代を申し出る。
「いいわよ。もう……いつまで放っておくのかと思ったわ」
 栞ちゃんは俺から視線を彼女に戻し、
「少し秋斗くんと話しなさい。でも、いつもの癖はダメよ?」
「……癖?」
「そう。翠葉ちゃんは頭の中で考えて答えしか言わないことがあるから。ちゃんと考えている過程も相手に伝えること。いい?」
「……はい」
 栞ちゃんは彼女のことをよく見ている。
 彼女の思考回路は時々わからない。
 擦れてないというよりは、純粋すぎるというか……。俺の常識が通用しないことがしばしばある。
 そんなところにも新鮮さは感じているけれど、時々とても困るんだ。
 栞ちゃんがドアを閉めて出ていくと、ゆっくりと彼女のもとまで近づいた。
「さて……翠葉ちゃん、何から話そうか」
「何を話せばいいでしょう」
 彼女は身を少し強張らせる。
 ここ最近はずっとこんな感じだ。
「まずは、俺を振った本当の理由かな?」
 にこりと笑みを向けると、彼女の喉がゴクリと動いたのがわかった。
 しだいに顔が引きつり出す。
 でもさ……いい加減色々と白状してもらおうと思っているから。
 翠葉ちゃん、覚悟してもらおうか?
 俺、今日は引かないよ――。