光のもとでⅠ

 だって、もう勘違いのしようがないから顔が熱くなることもない。
 自分に向かって歌われているような気がして身体が熱くなるとか、錯覚していた頃が懐かしい。
 そんな前のことでもないのに、すごく昔のような気がする。
 先ほどよりは落ち着いてステージを見ることができた。
 心は痛いけれど、視線を逸らさずに見ることができた。
 目の前にツカサがいるわけじゃない。
 だから、大丈夫。
「なんか落ち着いたっぽい?」
「……佐野くん。うん、涙は打ち止めみたい」
 たくさん泣いたから、きっと流れる涙もなくなったに違いない。
 これから先も、涙なんて補充されなくていい。
 補充されたらまたすぐに溢れてしまいそう。
 もう、涙なんていらない。泣きたくない。