「これ、ピアノ譜。歌詞もついているけど見る?」
 差し出された楽譜を手にしたとき、モニターに久先輩が映った。
 無事にステージへ上がれたのだ。
「あ……歌、止っちゃったね。ま、あのまま最後まで歌えるとも思っていなかったけど」
「……神楽さん、どうしよう。……私、余計なことしちゃったのかもしれません」
「いやいや、あれは最後まで歌いきれたとしても不本意でしかなかったと思う」
「でも、最後まで歌いきりたいって言っていたのに――」
『会場、すべての照明を落とせ』
 インカムにツカサの声が響き、モニターが真っ暗になる。
『放送委員、オケ止めてつなぎっ。理由はマイクの不調』
 これは朝陽先輩から放送委員への指示だった。
 ピュー、と口笛を吹いたのは神楽さん。