「……どうしてそこで黙っちゃうのかな」
 律儀っていうか、真面目っていうか……。
 付き合うことを断ったら、一緒にいることも話すこともすべてがぎこちなくなった。
 会えばどう接したらいいのかわからずに悩んでいるのが丸わかりだ。
 俺は何も変わらないと言ったのだから、何を気にする必要もないのに……。
 そんな彼女を追い詰めるようなことはしない。
 ベッドに下ろし、
「何も考えなくていいから少し休んで? 俺、ここで仕事してるから」
 空ろな目を手で覆う。
 目を閉じて、少し休めばいい。
「あ……でも、携帯鳴るしキーボードの音がうるさいかな」
 できれば彼女が目に入る場所で仕事をしていたいけど、音がうるさいかもしれない。
 それならリビングか蒼樹の部屋が妥当かな、と立ち上がり部屋を出ようとすると、
「行かないで――」
 自分の耳を疑った。
「……え?」
 振り返ると、慌てている彼女がいた。
「翠葉ちゃん?」
「あのっ……私、すぐに寝てしまうので……だから、それまででいいから……この部屋にいてほしいです」
 言葉は不安げに小さくなっていく。