「翠葉ちゃん、塞いでいるところ申し訳ないんだけど……」
 その声に顔を上げると少し困った顔の茜先輩がいた。
 茜先輩はそのまま座り、私の左右を見てにこりと笑む。
 すると香乃子ちゃんと佐野くんが立ち上がり、その場からいなくなった。
「隣いいかな?」
「はい」
 さっきみたいにビーズクッションの半分を提供する。
「あのね……私、ここからが正念場なんだ」
 茜先輩は泣き笑いみたいな、なんともいえない表情を隠すように俯いた。
「……次、茜先輩の歌」
「そうなの……。すごく思い入れのある曲だから、ステージに立つ前からきついと思ってる。でも、絶対に全曲歌いきりたいの。だから……今は翠葉ちゃんと一緒にいさせて」
 茜先輩がしがみつくように、私の腕に自分の腕を絡めた。