テーブルに用意されていた薬を彼女に飲ませると、十分としないうちにとろんとし始めた。
 今にもそこで寝てしまいそうな状態だ。
「翠葉ちゃん、夏とはいえ風邪を引かないようにベッドへ戻ろう?」
 いつものように横抱きにして彼女の使う部屋へと運ぶ。
 腕の中の彼女は必死で目を開けようとしているが、抗えないほどの睡魔に襲われているらしい。
 薬が良く効く体質なんだな……。
 そのとき――胸に手が添えられドキリとする。
 彼女に視線を落とすも、全く意識をしているようには見えなかった。
 それにしても……ここ数週間でどのくらい体重が落ちたんだろうか。
 彼女を抱えるということを何度もしてきたが、すいぶんと軽くなったように思う。
「……少し痩せたね」
 言えば彼女は苦笑する。
「元気になったらまた森林浴に行こう?」
 俺に言えるのはこんなことくらい。
 彼女は「本当……?」と目をまん丸に見開く。
「……本当。前にも約束したでしょう? また、外でランチしよう」
 彼女は視線を落として沈黙した。