私が顔を上げると、それが合図となり下から演奏が聞こえてきた。
 あ……ハープの音――。
 ひとりじゃない……。
 ここにいるのが自分ひとりなだけで、この曲の音を奏でる人はステージの下にたくさんいる。
 そう思ったら、また少し落ち着いた。
 でも、歌い始めたら複雑な心境が復活。
 寂しいのかな……。私、寂しいのかな?
 ツカサが誰かを好きだと、私、寂しいのかな?
 私が――私がツカサを好きだから、寂しいと思うのかな。
 あの涼やかな目が、ほかの誰かを見つめるのが嫌なのかな。
 それってどんなわがまま?
 すごく独占欲が強い人みたい……。
 近くにいてほしい、側にいてほしい。
 不安なときには手をつないでほしい……。