スタスタと前進したいけど、思うようには進めない。
 何せ人が多すぎるのだ。
「御園生、こっち」
「佐野くん?」
 手を引かれ、佐野くんのあとをついていく。
「御園生、逆だって。前に行ったらもっと見えなくなる。モニターを真上に見上げることになって首が痛くなると思わん?」
 そう言われてみればそんな気がしなくもない。
 あの場を離れるのに必死で、そこまで考えていなかったというのが正しい。
「飛翔が苦手?」
 コクリと頷く。
「佐野くんは飛翔くんとも飛竜くんとも知り合いだったの?」
「夏休みに立花と図書館で宿題やってたときに何度か会ってる。ま、癖のあるやつだけど、悪いやつじゃないよ。慣れるまでは時間をかければいいじゃん」