「蓮井先生、ハサミはありますか?」
「えっ!? ハサミは持ってないわ……」
「俺もカッターしか持ってない」
 もともと吹奏楽部なのだ。
 弦を使う楽器はこのハープくらいなのだろう。
 先生はどうしようかしら、とおろおろしだし、朝陽先輩がインカムで連絡を取ろうとしたそのとき、蓮井先生の後ろから背の高いふたりのヴァイオリニストが現れた。
「これでよろしければ」
「神楽さんっ! ありがとうございますっ!」
「チューナーは?」
 都さんに訊かれ、私は一番低いワイヤー弦をはじく。