ツカサはこれを誰に向けて歌っているの?
 そう思うたびに胸が締め付けられるような気がした。
 これで楽になるわけじゃない。
 わかっていても、胸をぎゅ、と掴まずにはいられなかった。
「……痛い?」
 朝陽先輩に訊かれ、
「違います」
 ただ、胸が抉られる気がする。
 物理的な痛みじゃないのに、こんなにも痛い。
「こんな歌――カメラ目線で歌わないでよ……」
 不意に零れた言葉に、
「司も今は必死だからね」
 朝陽先輩が苦笑しながら教えてくれる。
 でも、そんな受け答えも、今は聞きたくなかった。