緊張している、と実感するのには十分なくらい。
 でも、ここでぐずぐすしてはいられない。
 顔を上げると、知らない人が目の前にいた。
「準備、できました?」
「はい……」
「じゃ、それ預かりますよ」
「ありがとう、ございます」
「はい」
 音を消したチューナーを預け、昇降機に乗った。
 昇降機を上げてくれる人を見れば、コクリと頷いてくれる。
 そして、正面にはチューナーを預かってくれた人がにこりと笑って立っていた。
 その笑顔が誰かの笑顔に似ていて、私の緊張は瞬く間にほぐれた。
「大丈夫……」
 声に出してもそれは震えていなかった。