みんなが行ってしまっうと、私はひとりだった。
 空太くんにも香乃子ちゃんにも観覧席で聞いてほしかったから、このステージにおいて、私を誘導する人は存在しない。
 飛鳥ちゃんも桃華さんも佐野くんも、第一部が終わった時点で一度観覧席に戻っているはず。
 これから何が始まるのかは、奈落にいる人たちにすら知らされていない。
 リハーサルにいた放送部員の一部の人と奏者たち。
 それから、これをセッティングしてくれた一年生徒会メンバーと朝陽先輩だけが知っている。
 ほかに知っている人は昇降機を上げてくれる人のみ。
 私はチューナーの音に耳を傾けながら室内ブーツを脱いだ。
 大丈夫、大丈夫、大丈夫――。
 座ったままひたすら心の中で唱える。
 足裏から床の冷たさが伝ってきて、ブーツを脱いだばかりだけど、すでに十分冷たい気がした。