「すみません、今週中には持っていきますから」
「そのときは彼女も一緒じゃろうな?」
「っ!?」
 なんだよ、水筒がついでで本命は彼女か……。
「それは無理そうです」
「そんな隠さんでもよかろう?」
「いや、隠すとかではなくて――彼女、今具合が悪くて学校も休んでいる状態なので」
「……風邪かの?」
「いえ、持病がある子なので」
「……病院は?」
「うちの病院で湊ちゃんと紫さんが診ています」
「なら安心かのぉ……」
 と、何かを考えているような顔をする。
「どうして彼女にこだわるんです?」
「秋斗があそこに連れてきたというだけでも十分な理由になると思うがの?」
 ニヤリ、と笑って言葉を足す。
「それに、わしの陶芸ファンともなれば会いたいに決まっておるじゃろうが」
 なるほど……。
「彼女も会いたがっていたので、元気になったら連れていきます」
「それまでは水筒を持ってくるでないぞ? 呼びつける口実がなくなるわ」
 言って、供の人間を連れて廊下を去っていった。
「秋斗様、会長は何をしにいらしたのでしょうか……」
 恐る恐る訊いてくる蔵元に、
「あれは単に俺をからかいに来ただけだから気にしなくていい」
 じーさんは時々こうやって現れる。
 そのたびに周りの社員は肝を冷やすのだ。