茜先輩に紙コップを渡すと、香乃子ちゃんは私のすぐ脇に置いてあった布の手提げ袋から小さなスケッチブックを取り出し、猛スピードで絵を描き始めた。
 一生懸命に手を動かす姿を見て思う。
 人には必ずしも得て不得手があるのだろうか、と。
 得意なものもあれば苦手なものもある。
 それはごく一般論だと思う。
 だって、苦手なものばかりが目に付いて、得意と思えるものが見えない人もいると思うから。
 ほかでもない自分がそうだ。
 自分が得意だと思えるものがあって、それを選び、続けることができたなら、それはやっぱり幸せなことなのだと思う。
 進路を決めるとき、人は何を考えるのかな……。