ほかになんの理由もない。
「それだけなのに……ツカサに肘でつつかれるまで気づかないなんてどうかしてる」
 思わず苦笑してしまう。
 伴奏を合わせやすいように楽器の配置がしてあったし、耳から常にモニター音を拾うことができる状態だったのに。
 私、何をしていたんだろう……。
 あ……さっき一緒に演奏した樋口先輩たちにそのことを謝れなかった。
 きっと、そのことを気にかけて、また一緒に演奏しよう、と声をかけてくれたのに。
 やっぱり、今日の私はどうかしている。
「茜先輩……」
「ん?」
「今日の私は棒切れ以下かもしれません……」
 なんて情けない一言だろうと思いつつ、そんな言葉を零した。