「……今ですら相当ダメージ受けてると思うわよ」
「でしょーねぇ……」
「それでも側を離れられないみたいだけど」
 正直、あの男がひとりの女――しかも女の子と言える年の子に夢中になるとは思いもしなかった。
 今ですら疑ってしまう。
「俺もびっくりしましたもん。秋斗さんから本命を見つけたって聞いたとき」
 それはそうだろう。若槻は秋斗と一緒になってそこら女を漁っていたのだから。
 考えてみれば、そんな男を翠葉の側につけていいものか、とは思う。けれど、コーヒーに口をつけ秋斗の話をする若槻の表情から怪しい気は感じられない。
 妙に腹が据わっている気すらする。
 ……向き合う覚悟を決めたということか――。
「さて、翠葉が痛がってるからそろそろ戻るかしらね」
 声をかけると、
「じゃ、俺カップ洗います」
 と、私が手にしてるカップへ手を伸ばしてきた。
 どうしてなかなか躾けがなってるじゃない……。
「ちょっと湊さん……。俺、一応家事や自炊はできる人間なんですが。そんな意外そうな目で見ないでください」
「あら、ごめんなさい」
 意外とマメな男なのだろうか。
 まぁ、何にせよ苦労してきていることに変わりはない。
 この子が救われる日は来るんだろうか……。
 そんなことを思いながらゲストルームへと戻った。