冷たいことを予想してペダルに足を乗せたけれど、意外なことに冷たい感触は得られなかった。
 それどころか、ほんわりと優しいあたたかさを感じる。
 不思議に思ってピアノの下を覗き込むと、そこにはレトロな様相の暖房器具があった。
 二本あるうちの一本がぼう、とオレンジ色の光を放っている。
「遠赤外線ストーブを用意させた」
 ピアノの傍らにツカサが立ち、暖房器具の正体を教えてくれる。
「寒いならもう一段階上げられるけど?」
「ううん、大丈夫」
 大丈夫なんだけど……。
「ツカサ……。あの、どこで歌うの?」
 この歌の主役ともいえるツカサがピアノの鍵盤側にいるのはおかしい。