次へ次へ、とまるで手を引かれるように声がするりと出てくる。
 けれど、一番最後のサビの繰り返し部分に差し掛かったとき、ほんの少し声がぶれた。
 やっぱり、この歌詞を今歌うのはつらいのだろう。
 私は自分のパートを歌い始めるのと同時に茜先輩の手を取った。
 手と同じようにふたつの声が重なると、曲は何事もなかったように終焉を迎える。
 拍手喝采の中、茜先輩に促されるまま四方向にお辞儀をした。
 昇降機が下がり始め、観覧席から完全に見えなくなると、
「ごめんね、最後ぐらついちゃった……」
 茜先輩は悔しそうに呟いた。
「私は茜先輩がいなかったら、始終ぐらついていたと思います。一緒に歌ってくれてありがとうございます。それから、私のために歌ってくれたの、とても嬉しかったです。ありがとうございます」
 たとえ一フレーズが久先輩への想いだったとしても、それも含めて、嬉しいと思えたんです。