「翠葉のは体質みたいなものなのよ。どこか内臓が悪いとかそういうことではないの」
「質問。体質であんなに具合悪くなれるものなの?」
「血圧が低いのは心臓に疾患があるからと関連付けられもしなくはない。でも、体位を変えただけで血圧が下がるとか、その血圧が正常値に戻らないとか、運動時の血液循環量が増やせないのは体質に属するわね。自律神経失調症って言葉くらいは知ってるでしょ? それの症状が顕著に出るとあぁなるのよ」
「今よりひどくなることは?」
「考えたくないわ。でも、これからの季節、原因不明の痛みが出てくるらしい。本人はそれが一番つらい……というよりは怖いみたいね」
「原因不明って? 普通、痛みって炎症値が出るんじゃないの?」
「出ないのよ。そこがわからない……。あれだけ痛がっているのに炎症値が出ないからこっちも手の打ちようがない。痛み止めも効くときと効かないときがある。脳の痛覚神経をブロックする形で食い止められればいいけれど、それがだめなら対症療法。局部麻酔を使ったりするわ」
「……それ、どこに打つの?」
「胸や背中に七、八本」
「……俺、骨折したとき手術前に打ったけど、麻酔って結構痛いよね?」
「神経の中枢に打つんだから痛いに決まってるじゃない。あの年の頃の子が受けるような治療じゃないわ」
「……秋斗さん、耐えられっかなぁ……」
 若槻はコーヒーカップを持ったまま宙を見た。
 どうかしらね……。
 秋斗は怪我らしい怪我もしてきてないし、病気だってない。時々風邪をひくのがせいぜいだ。