部屋に戻る司を視線で追っていた若槻が一言。
「弟くん、ずいぶんあっさりとした人っすね」
「あっさりっていうか捻くれ者っていうか……。あんたと大差ないわよ」
「えぇっ!? 俺、あんなにドライっ!?」
「干からびてると思うわよ?」
「……相変らず容赦ないですね。彼はリィと同級生?」
「違うわ。年は同じだけど学年はひとつ上」
「……あ、そっか。お姫さん留年してるって言ってたっけ」
「そっ、ここに越してきたのは学校に通いやすくするための一環よ。幸倉からじゃ車でも三十分はかかるからね。通学の負担を減らすため」
「なるほどねぇ……」
 司に渡されたものを紙袋に入れると、
「ねぇ、お姫さんはどんな病気なの?」
 やっと訊いてきたか……。
「コーヒーとお茶、どっちがいい?」
「インスタントでコーヒー」
「……どうせ淹れるならちゃんと淹れるわよ? そのくらい私にもできるんだけど……」
「いや、時々インスタントが無性に飲みたくなるんです。何よりも、湊さんのお手を煩わせるとあとが怖いっす」
「あら失礼ね。私の淹れたコーヒーが飲めるんだからパソコンメンテナンスくらい引き受けなさいよ」
 そんな軽い応酬をしつつ、キッチンでインスタントコーヒーを用意した。