仕方がないから手っ取り早く人が集まる場所、ウィステリアホテルの中に放り込んでみたけれど、もともと順応力が高かったこともあり、俺の意図に反してそれすらも難なくこなされてしまった。
 いったいどういうアプローチをしたら解きほぐしてやれるのか――。
 残念ながら、俺は医者でもなんでもないのでわからない。
 そこに蒼樹が戻ってきた。
「どう?」
 栞ちゃんが訊くと、
「うーん……彼のこと、少し訊いてもいいですか?」
 と、なんとも言えない顔をした。
「訊くって?」
 俺が訊き返すと、
「今、両親もいないってことを知りました」
「……それ、若槻が喋ったの?」
「……そうですけど?」
 蒼樹、それ――結構な進展だ。
 思わず栞ちゃんを見てしまう。と、栞ちゃんも同じことを思ったのだろう。
「御園生兄妹マジックね……」
 手に持ったフォークはそのままに、まじまじと蒼樹を見た。