香乃子ちゃん、がんばって。
「本当はさ、翠葉ちゃんも行きたかったでしょ? あ、違うかな? 翠葉ちゃんが行きたかったでしょ?」
 くすりと笑った空太くんに顔を覗き込まれた。
 身長が高いだけに、覗き込むときはかがまれてしまう。
 今はパイプ椅子に座っているからなおさら。
 空太くんは私の横にしゃがみこんだ。
「う……ちょっと、ね。ちょっとだけ、だよ……? だって……いつも力になってくれる人だもの。つらいときは一緒にいたいなと思うから」
 何をどうしてあげることもできなくても、もし泣いているのなら、その傍らで同じ空気を吸っていたいと思う。
 吐き出したい何かがあるのなら、その言葉をひとつ欠けることなく拾いたいと思う。