「でも、私……翠葉ちゃん付き」
「大丈夫だよ。本当に大丈夫。私は自分の出番までここにいればいいのでしょう?」
「でもっ――」
「飲み物は手に持っているし、なんの問題もないよ。だから、行って?」
 私にも力にならせてほしい。誰かを支える力に……。
「香乃子ちゃん。今、私の右隣には香乃子ちゃんがいるの、香乃子ちゃんは佐野くんの左隣に行くべきだと思う。……自分の右隣は、その場の状況に寄って誰にでも変わると思う。それと同じで、意識して誰かの左隣に行くこともできると思うの」
「七倉、翠葉ちゃんには俺がついてるから行ってきな」
 優しい声が降ってきて、見上げるとそこには空太くんが立っていた。
 もう一度香乃子ちゃんを見ると、唇をきゅっ、と引き結び、
「ありがとうっ! 行ってくるっ」
 と、走り出した。