ふたりとも視線すら合わせなかったというのに。
 時折久先輩が茜先輩を目で追う程度。
 こんなこと、今まで一度もなかったのに。
 それとも、こんなことは今まで何度もあって、私が気づかなかっただけなのかな……。
「翠」
 ツカサの声に思考を遮られてはっとする。
 顔を上げ、右隣にいるツカサを視界に認めると、
「体調は?」
「あ……大丈夫」
 それもそのはず。
 クラスでは忙しく動いていたものの、図書室へ来てからはずっと座っていたし、紅葉祭が始まったといっても、私の仕事は今までと変わらない。
 つまりは会計作業全般。