光のもとでⅠ

「さ、遅くなっちゃったけど夕飯にしましょう」
 部屋に入ってきたのは栞さん。帰宅してから三十分ほどしか経っていないものの、夕飯ができたらしい。
 栞さんの手にあったトレイを確認し、その役を買って出た。
「じゃ、俺は翠葉にスープを飲ませてから行きます」
「あらそう?」
 言いながらトレイを渡された。
 その動作を若槻くんが目で追っているのがわかった。
 スープカップをまじまじと見てから翠葉の方を向いた。
「……リィはそれしか食べないの?」
「……えと、今だけです。この時期だけ……」
 翠葉は引きつった顔で答える。
「あと少ししたら湊も来るわ。そしたら点滴入れてもらえるから」
 そう言われてみれば、今日はまだ点滴を打っていなかった。
 今日口にした水分量と発汗した水分量。どう考えても現時点では見合わない。全然足りてない。点滴を入れてもらったら少しは楽になるだろうか……。
 改めて翠葉を見ると、表情が強張っていた。
「翠葉……?」
 今度は何を不安に思ってる……?