栞さんと昇さんは混雑具合に身を引き、クッキーのみ買ってくれた。
 クッキーの販売は受付でできるけれども、そのクッキー購入者も来場者数にカウントされるのが嬉しい。
 どうやっても教室に入れるお客様は人数が限られるし、待ち時間も発生する。
「待ち時間ってなんだか申し訳ないね」
 廊下を見て思ったことを口にすると、バックヤードで次なる広告メールを作っていた和光くんが顔を上げた。
「遊園地みたいにファストパスがあればいいのにー」
 飛鳥ちゃんの言葉に「それは意味がないっしょ」と和光くんが即答。
「ファストパスは、今はダメだけどこの時間ならOKですよ、って仕組みだ。身内客にはいいかもしれないけど、それじゃ制限時間内でフリータイムを楽しむ生徒には使えない」
 和光くんは言いながら、何かひらめいたように高速でタイピングを始める。