蒼兄たちのオーダーをバックヤードに持っていくと、桃華さんと鉢合わせた。
「桃華さん、お願いしてもいい?」
「何を?」
 ほんの少し傾けた顔に伴い、きれいに切り揃えられた髪の毛たちが、さら、と動く。
「そのトレイとこれ、取り替えて?」
 桃華さんの返事は聞かずに素早くそれらを取り替えた。
「蒼兄のところにケーキ運んでね」
 にこりと笑って最後の一押しをすると、桃華さんは少し顔を赤らめて「お安い御用よ」と答えてくれた。

 一時間半とはなんとも短い。
 人が途切れることなく来ていたからか、あっという間に時間が過ぎていった。
 途中、お父さんとお母さんも来てくれ、飛鳥ちゃんと佐野くんをお父さんに紹介することもできた。