光のもとでⅠ

 ふたりはクスリと笑った。まるで内緒話をしてるみたいに。
 それまで穏やかな表情で場を見守っていた秋斗先輩が、
「若槻、翠葉ちゃんに手ぇ出したら締めるよ?」
「どっちがですか。こちらも今となっては彼女の兄貴分なんで、秋斗さんがリィに変なことしたら許しませんよ?」
 ふたりの会話に複雑な思いを抱きつつ、それでも――。
「これは思わぬところで味方ゲットかな?」
 不思議な関係に肩を震わせて笑う。すると、翠葉もクスクスと笑った。
「あ、翠葉ちゃんまで笑うなんてひどいな」
 秋斗先輩の言葉に翠葉の笑いはもう少し大きなものへと変わる。そして、その場を巻き込むようにして笑いあった。
 こんなふうに笑う翠葉をどれくらい久しぶりに見るだろう……。
 きっと、翠葉はこうやってみんなで笑えていたらそれで幸せなんだよな。
 なのに、どうしてそんなことすらが難しいんだろう。
 俺はそれを目の当たりにするたびに切なくなるんだ……。