「蒼兄……うちのカフェ、ケーキは美味しいの。でもね、この衣装にだけは慣れそうにないよ」
「……慣れなくていいよ。俺は今すぐにでも翠葉にジャージをはかせたい」
「こらこらこらこら、せっかく楽しく盛り上がってるのに、ふたりしてわざわざ盛り下げることないでしょ。とりあえず、オーダーしよ! リィ、何がお勧め?」
 メニューを開いた唯兄に訊かれ、「これとこれ」と指で指したのはジャックパイと姫タルト。「じゃ、ふたりともチョイスセットでそのふたつ」
 蒼兄の言葉をそのままオーダーシートに書き込む。
「飲み物は? 蒼兄はブラックコーヒーだよね? 唯兄は?」
「コーヒーにスティックシュガー四本ミルクつき!」
「……唯兄、胸焼けしない?」
「頑丈な胃と、糖分を糧とする優秀な頭脳があるから大丈夫」
 なんとも奇抜な答えが返ってきたけれど、それがとても唯兄らしく思えた。