「翠葉」と聞き馴染みのある声がかけられたのは。
 この声を間違えるわけがない。
 確認もせずに名前を呼んで振り返る。
「蒼兄っ! っ――唯兄っ!?」
 目をやった先にはふたりが揃って立っていた。
 教室がざわめき、人の視線がふたりに集る。
 こんなときに、「やっぱり格好いいよね」と思う自分は相当なブラコンなのだろう。
 ふたりを窓際のテーブルへ案内すると、
「また、えっらいかわいい格好してるけど、こんな格好してたらあんちゃん、気が気じゃないんじゃない?」
 唯兄と蒼兄は、私のことを頭からつま先までまじまじと眺めていた。
「さすがに衣装のことまでは聞いてなかった……」
 蒼兄は口元を引きつらせて苦笑した。