「お姫さん、こういうのは勘弁……」
「すみません……」
「……本当はさ、妹にこうしてあげられたら良かったんだけど――」
 若槻くんが小声で話す。
 視線の先には翠葉がいるけれど、きっと妹さんに言いたかったのだろう。
「こうやって手を差し伸べることすらしなかったんだ」
 そっか……本当に何もしないうちに妹さんを亡くしたんだ。
 それはかなりきついだろう……。
 でも、どうしてだろう?
 なぜ、手を差し伸べることもできなかったのだろうか。
 もしかしたら、家族関係にも何か問題があったのかもしれない。
「お姫さん、悪いんだけどしばらく俺の妹になってくんないかな?」
「……私が妹さん?」
「そう、少しの間だけ。うん、俺が満足するまでというか、やってやりたいと思っていたことをすべてやり尽くすまで」
 翠葉のいつもの癖。困ったことがあると俺を仰ぎ見る。
 俺が提案したも同じだ。「うん」って言ってやれ。
 俺がコクリと頷いて見せると、翠葉はゴクリと唾を飲み込んだ。
 視線を若槻くんに戻し、
「私を見ていてつらくないですか?」
 と、尋ねる。