教室にはほとんどのクラスメイトが揃っていて、あとは川岸先生が来るのを待つだけだった。
 そんな中、今は海斗くんが佐野くんにインカムの使い方を教えている。
 私も復習がてらに聞いているけれど、機械に対して苦手意識が強いだけに、メモ帳に書いて持ち歩きたい衝動に駆られる。
 私がメモ帳を取り出そうとする傍らで、佐野くんはリモコンをポチポチといじりだした。
「こういうのは使って慣れるが常套手段!」
「翠葉は不安そうな顔してるな?」
 海斗くんに言われて情けない顔になってしまう。
「海斗くん、私、自慢じゃないけど機械にはものすごく疎いんだから」
 私なりの抗議をしてみたけれど、それは笑いを助長させるだけだった。
「俺は結構得意」という佐野くんが羨ましい。