「てるてる坊主っていつ作ったら効力あるのかな? いつから吊るすって決まりがあるのかな?」
 真面目に尋ねた私に返ってきた言葉はひとつ。「知るか」だ。
 もちろん呆れ顔がセットだったのは言うまでもない。
 私は瞬時に訊く相手を間違えたと思った。
「風も強くはなさそうですね」
 吊るされているてるてる坊主はひっくり返ることもなく、時々白い裾をひらひらとそよがせていた。
「あぁ、風も穏やかだね」
 静さんはブライトネスパレスでの件や仕事の話をすることはなかったし、私も自分からその話を持ち出すことはしなかった。 
 ただ、今目の前に広がる空を見て、天気の話をしただけ――。