「そこに積んであるのが待機本ってところね。今日はこれ没収」
「はぁっ!?」
「しかも、あんた、内容の都合上、順番に読まないと理解できないような構成に本を積む癖があるから、最初の数冊を抜いておくだけで十分ね」
 と、俺が読もうと思っていた本五冊を抱えて「おやすみ」と部屋を出ていった。
「……やられた」
 ある種、俺の精神安定剤でもある本を持っていかれるとは予想すらしていなかった。
「……どうするか」
 悩んだ末、デスクに置いてあった文庫本を手に取る。
 それはなんてことのない本。
 実用書でも専門書でも教科書でもない。
 絵本ではないが、誰もが一度は読んだことがあるか、耳にしたことのある本。
 サンテグジュペリ、「星の王子様」の表紙を懐かしく思いながら丁寧にめくった。