光のもとでⅠ

 ボタンひとつで湯が溜まるのは便利だ。
 実家は手動でコックを捻ってから湯が溜まるまでに十分ほどは要す。
 そして、自動的に止るわけではないため常に時間を気にして待たなくてはいけない。
 一方、このマンションはボタンを押してから五分ほどで湯が溜まり、湯は勝手に止まる仕組みになっている。
 湯を溜めている間に洗面所の引き出しから炭酸ガス発泡系の入浴剤を取り出しバスタブに放り込んだ。
 その後いったん自室に戻り、学校で使ったジャージなどの洗い物を洗濯機に入れ、風呂上りには稼動できるようにスタンバイを済ませる。と、ピピピ、と湯が溜まったことを知らせる音が鳴る。
 精神的なリラックスを得るために、湯の温度は三十九度と少し低めの設定にしてあった。