玄関を開けると、
「おかえり」
 と、姉さんがキッチンから顔を覗かせた。
「ただいま」
「今夕飯作ってるから二十分以内でお風呂から上がってくること」
 帰宅してすぐ命令された。
「……その二十分の使い道、俺に選択権はないわけ?」
「ないわね」
 相変わらず横暴だ。
「私の用意した夕飯の席に、ホコリっぽいまま着かれてたまるか」
 言いたいことだけ言って、姉さんはキッチンへ引っ込んだ。
 別にホコリっぽい作業をしてきたわけではないが、近頃は帰ってきたらシャワーを浴びるというのが習慣になっていたため、姉さんの命令に背く理由もなければ選択肢がほかにあったわけではない。
 自室にかばんを置くと、着替えを持ってバスルームに向かう。