「は?」と発したのは俺と若槻くんで……。
「あの惨状を意識しないで片付けるってどれだけ強靭な精神力――いや、忍耐力持ってるんですか?」
 と、若槻くんに訊かれた。
「いや、本当に記憶にないんだけど……」
 それを聞いて先輩が笑う。
「蒼樹はさ、情報処理能力に長けているから資料集めをやらせても、こっちが使いやすいようにファイリングしたものを持ってくるんだ」
「……え、あの情報量をファイリングっ!? だって、資料集めにだってすっげー時間がかかるようなものしか言わないし、そのうえあの分量でしょっ!?」
「あぁ、若槻に任せるものの倍は資料探させてるはずなんだけど。要する時間は雲泥の差。先日若槻に頼んだ分量なら半日でファイリングしてくる」
 若槻くんはこちらへくるり、と向き直り、
「御園生さんっ、うちの会社に入りませんかっ!? しかもこの人の直轄でっ」
 と、俺の勧誘を始めた。
「や……実は一度断ったんだ」
「……今からでも遅くありません、この人が人らしく、人に迷惑をかけずに仕事をするためにはあなたのような人材が必要ですっ」
 真面目な顔で言われるからついついおかしくなる。
「若槻……おまえが俺をどういう目で見てるのかがよぉくわかった」
 それに対し、
「今さらですか?」
 と、若槻くんは冷めた目で静かに返した。