光のもとでⅠ

 でも、こう何度も礼を言われたところで反応のしようがない。
 そろそろ作業を再開しろ、と言おうとしたら、翠のスイッチが切り替わり、一瞬にして作業に意識を集中し始めた。

 ――「はい、そこまで」
 声をかけたのは、残り三枚手付かずの状態でのこと。
 少し前から翠の作業を見ていたが、時間的な問題から、そこでストップをかけるのが妥当だと踏んだ。
 三件の収支報告であれば、明日に持ち越しても負担にはならないだろう。
 翠はテーブルから少し離れて深呼吸をする。
 手を組み、頭上に腕をぐんと伸ばし軽くストレッチをすると、胸骨のあたりから、コキ、と小気味いい音が聞こえてきた。
 ストレッチで胸骨が鳴る人間を初めて見たと思う。