光のもとでⅠ

 リビングでコーヒーを飲んでいると、秋斗先輩から電話がかかってきた。
『今マンションに着いた。機材を運ぶから玄関開けといて』
「ありがとうございます」
 きっと翠葉を起こさないように、と気遣ってくれてのことだろう。
 玄関を開けて待っていると、秋斗先輩と台車を押してくる人がいた。
 きっとその人が若槻さんなのだろう。
「葵に会えたって?」
 そんなふうに先輩に話しかけられた。
「いるならいるで教えてくださいよ」
 先輩はクスクスと笑う。
「俺が会ったのも少し前なんだ」
「え?」
「ウィステリアホテルで植物をいじってる人間が葵に似てたからさ、ちょっと静さんに耳打ちしたんだ」
「……ってことは秋斗先輩の縁故だったんですか?」
「縁故っていうか、ヘッドハンティング? なぁ、若槻?」
 と、台車を押していた彼に話を振った。すると、
「秋斗さん、あなたヘッドハンティングの意味をもう一度調べなおしたほうがいいと思います。えぇ、しょせん部下の戯言進言だとでも流しておいてください」
 と、ボソリと呟く。
 なんだかいいぺアだな……。
 思わず笑みがもれる。