光のもとでⅠ

 マンションに着くと、
「何かあったら声かけろよ? 基本的にはここに常駐してるから。あと、俺の部屋は一階の最奥ね」
「葵、ここに住んでるのか!? 実家近いだろうよ」
「あぁ、お姉のとこでもよかったんだけどさ、幸い部屋は余ってるからってオーナーが」
 このマンション、いったいどれだけの空きがあるんだろう。それでも破綻しないって……。
 いや、藤宮の次期会長と言われている人だ。こんなことくらいでは破綻も何もないのだろう。
「相変らず顔に出るな」
 と、葵が笑う。
「言ってくれるな……」
「じゃ、俺仕事に戻るわ」
 と、ロータリーで別れた。
 翠葉はマンションに着いても目を覚ますことはなく、これから移動すると思えば起こして吐き気を感じさせるよりは寝かせたままのほうがいいだろう、という判断のもと、寝かせたまま移動した。
 ゲストルームのベッドに寝かせて思う。ずいぶんと痩せた、と。
 まだ梅雨は始まったばかりなのに、この時点でこれか……。
 早く梅雨が明ければいい……。そして、できれば台風の少ない夏であってほしいと願った。