「それでもし、蒼くんが倒れたらどうするの? そのときの翠葉ちゃんを想像してみて?」
 俺が倒れたら?
 ……まずそんなことはあり得ないけど――。
 俺が倒れたら、この繊細な妹はきっとひどく自分を責めるのだろう。そして――。
「……最悪だ」
「でしょう? 最悪なのよ」
 と、栞さんは両腕を組んで神妙な顔をする。
 俺が倒れたら、翠葉は誰にも何も言わなくなるのだろう。それは今まで以上に。
 もしかしたらバングルを外すと言いだしかねない。
「俺、なんでそこまで考えられなかったんだろう……」
「それはさ」と、葵の声が割り込む。
「現時点で蒼樹がいっぱいいっぱいってことじゃないの?」
 俺が、いっぱいいっぱい……?
「なんかさ、すごく久しぶりに蒼樹に会ったけど、おまえ全然余裕ないじゃん。昔からシスコンだったけど、今はそれに拍車がかかりすぎ」
 あぁ、そうか……。こいつは去年の出来事を知らないからな……。
「翠葉、一年留年したんだ。去年は三月から十月まで入院してた」
「……なるほどね。じゃ、そこからおまえもずっと突っ走ってきてるってことだろ?」
 痛いとこをつくな……。
 相変わらず要点ばかりついてくる。