「確かに仕事よ。静兄様から依頼された歴とした仕事。でもね、もうそれだけじゃないのよ。私にとってもとても大切な子なの」
 と、青白い翠葉の顔に視線を移した。
「色んな患者さんを見てきたわ。でも、ここまでひたむきな患者さんにはあまり会ったことがない。……まだ十七歳なのにね」
 少し切なそうに表情が歪んだ。
「……もう少しでいいからわがままを言ってくれるといいんですけど」
 言うと、
「そういうところもそっくり! 蒼くんもよ? 全部ひとりで抱えようとしなくていいの。それをすると翠葉ちゃんはもっとつらくなるわ」
 でも――。
「翠葉は人の手を借りることに抵抗を感じているじゃないですか。……だから、その手が増えるともっとつらくなるんじゃないかって思ってしまって……。それなら、それをすべて自分が引き受ければ少しは楽になるんじゃないか、って。俺、本当に何もしてやれないので……。少しでも負担を軽くしてやることしか思い浮かばなくて」
「……困った子たちね」
 栞さんは翠葉よりも身長が低い。自分よりはるかに小さい人だ。
 けれど、そんな小さい人の目は俺を包み込むほどには寛容で、思っていたことをすらすらと口にしてしまう。