「見てのとおり、寝てる。その間にこの作業を終わらせるよ」
 立ったままだった司っちは、普段秋斗さんが座っているであろう立派過ぎる椅子に深く身を沈めた。
「あのさ、君は怒らないであげてくれないかな。バカとかアホとか、身の程わきまえろ、とか。そんなことは言わないであげてほしい。確かにそういうことを言わなくちゃいけないときもあるけれど、今はやめて?」
 これは俺からのお願い。
「……だから、これ、ですか?」
「そっ、抜け道確保。これ以上リィから何かを取り上げるのは忍びないからね」
 司っちは何か思うところがあるのか、すぐには口を開かなかった。
「言いたいことがあるなら言ってもいいよ。けど、俺ができるのはこんなことくらいだし、取り上げるくらいなら与えるほうを選びたい。それができる状況なら」
 ねぇ、司っちはどうなのよ。