すでに血圧の発作を起こし始めた翠葉は体を起こすことすらできない。
 上体を起こすだけで血圧が下がり、耐えようのない吐き気に襲われるのだという。
 現に、横抱きにするだけでも額に汗を滲ませる。
 車に乗せたときには気を失っていた。
「栞さんっっっ」
 車の前方にいた栞さんが俺の声に反応してすぐに来てくれる。
「蒼くん、携帯見せてっ」
 すぐに携帯を渡すと、栞さんはそれを見ながら翠葉の脈を取る。
「気は失ってるけど大丈夫。手首で脈が取れるしひどい不整脈も出てない。横になっていれば回復するわ」
 栞さんもほっとしたのか肩の力が抜けるのがわかった。
「ここに一緒にいてくれて、本当にありがとうございます……」
「……蒼くんと翠葉ちゃんは本当によく似ているわ」
 と、少し困ったように笑う。
「え……?」
「ふたりともすごく律儀なの。それはもう、礼儀正しいという域を超えてて他人行儀とも感じられるほどに」
 言いながら脇腹を小突かれた。