光のもとでⅠ

 実際には何もしていないのにそう思えるのは、翠葉が一歩先へ進めたからだろうか。
 娘の成長を誇らしく思うというそれとは違い、なんだか一緒に一歩先に進める気がするんだ。
 これはなんの「歩み」なんだろうな。
 家族の絆、かな――。

「私、この仕事が終わったら、こんなに長期間家を空ける仕事は引き受けないわ」
「願わくば俺も、かな」
「零はいいわよ? だって稼いできてもらわないと困るもの」
「今までだって家でできてたでしょー?」
「そうだけど……」
 少し笑って碧が俺を見上げた。まるでうかがい見るように。
「翠葉のことは関係なく、今回の仕事、楽しいとか思っちゃったんでしょ?」
「……そこを突かれるとちょっと痛い」
 確かに楽しいと思ったしやり甲斐も感じた。
 人とものを作り上げることの楽しさを知ってしまった。